脳血管疾患に対するリハビリ
脳卒中リハビリの特徴
質の高い医療は「人」がつくる。だから、「人」を大切にします。
脳血管疾患とは
脳血管疾患とは、いわゆる脳卒中のことです。脳の中の血管や血液の障害により発症する病気の総称です。発症すると、言語障害や飲み込み障害、麻痺などの機能障害が残ることがあります。私たちスタッフは、患者さんが日常生活を困難にしている原因を医学的に評価し、能力の向上を目指します。
その方らしく、より質の高い生活を目指して
「脳血管疾患リハビリテーションチーム」が支援します
当院は大学病院や医療センター等の急性期病院と連携し、脳卒中を発症した患者さんの回復期のリハビリテーションを行っています。脳卒中とは、脳の血管に起こる障害の総称で、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などがこれに含まれます。当院では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による「脳血管疾患リハビリテーションチーム」が、脳卒中をはじめとする脳血管疾患を専門にリハビリを行っています。 ひとくちに脳卒中といっても、どのような障害があるかは脳血管の損傷を受けた部位や程度によって異なります。半身麻痺などの運動機能障害、食べ物の飲み込みが難しくなる嚥下障害、言葉が話しづらくなる構音障害など多種多様なため、リハビリもそれぞれの患者さんに応じたオーダーメイドのプログラムが必要です。「脳血管リハビリテーションチーム」は、脳血管疾患に精通しているからこそ、培われた知識や技術で患者さんの身体機能を引き出し、より質の高い生活を営むことができるよう支援しています。 また、「脳血管リハビリテーションチーム」は、日々の研究や勉強を積み重ね、学会や講演会にも積極的に参加しています。現在、脳卒中の患者さんの在宅復帰率は約7割以上に達していますが、今後も患者さんがその方らしい生活を送ることができるよう、リハビリに取り組んでいきます。
脳血管疾患リハビリの 対象となる主な疾患 |
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発達障害のある子どもたちに、発達援助を行います
小児リハビリテーション
脳性まひなどにより発達障害のある子どもたちに、小児リハビリテーションを行っています。早期から適切なリハビリテーションを行うことにより、潜在的な能力を引き出し、運動機能の改善が期待できます。当院では地域の特別支援学校と連携し、スタッフが学校を訪問し学校生活の様子を見学するなど、情報をリハビリに生かしています。
在宅復帰後の暮らしをより安全・快適に自宅改修のアドバイスを行います
入院中にご自宅へお伺いし、玄関・廊下・居室・トイレなどを拝見して、手すりの設置や段差解消、スペースの確保などの自宅改修、必要と思われる福祉用具の選定もアドバイスさせていただきます。自宅改修は、その方らしい生活やご家族の皆さんをサポートするうえでも大切なことです。
脳卒中のリハビリテーション
生活のリズムを取り入れた総合リハビリテーション
リハビリセラピストが行う訓練だけが「リハビリ」と思われがちですが、入院生活の中で、トイレ・風呂・着替え・食事など日常生活で当たり前のことを行っていくこともまた「リハビリ」なのです。当院では、訓練でできていることを、日々の生活の中で自宅を想定し、看護・介護職が継続して行うことで、早期退院を目指しています。
毎日できる安心感。
当院の脳卒中リハビリは365日体制!!※
当院では、365日体制でリハビリテーションを提供しています※。入院患者さんに対してはより手厚いリハビリテーションを行うため、全国平均は90分のリハビリ時間に対し、当院では最大180分もの時間を費やしています。また、セラピスト間では、綿密な情報共有を行い、1人ひとりの患者さんに合わせた質の高いリハビリを提供していきます。
※365日体制は、回復期リハビリテーション病棟のみとなります。
「できる」を「している」へ、それが当院の方針です。
入院中にリハビリによってできるようになった生活動作を、入院生活にいち早く反映させることが重要です。早期に自立した生活を取り戻すには、訓練で「できる」では駄目なのです。生活の中に取り入れていつも「している」動作にしていくことを行っていきます。
脳卒中リハビリの1日の流れ
日常のリズムを取り入れた総合的リハビリテーション
リハビリ室で行われる訓練だけがリハビリと思われがちですが、入院中の生活の場である病棟で「廊下を歩いたり」「お風呂に入ったり」「トイレにいく」のも実用性を見据えた大切なリハビリです。
1日の流れ(一例として)
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- 起床
- 起居動作訓練
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- 洗顔
- 整容動作訓練
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- 更衣
- 更衣動作訓練
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- 朝食
- 食事動作訓練
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- リハビリ
- 理学療法訓練
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- トイレ
- 排泄訓練
- 移行動作訓練
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- リハビリ
- 言語聴覚訓練
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- 昼食
- 食事動作訓練
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- 入浴
- 入浴動作訓練
- 移行動作訓練
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- リハビリ
- 作業療法訓練
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- 夕食
- 食事動作訓練
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- 更衣
- 更衣動作訓練
- 就寝
ご家族へのサポート
患者さんも不安ですが「家族」も不安なんです。
私達はご家族の不安もサポートしていきます。
医療保険・介護保険のことや在宅サービスのことなど、家族にとっても初めてのことばかりです。どうしたらよいか迷う前にまず、私達に相談下さい。私達の仕事は、患者さんとご家族の不安を取り除くことです。医療チームの一員として、常に患者さんの病状を把握し、患者さんの不安にいち早く気づき解決が出来るよう努めています。入院にともなう医療費などの経済的な問題や退院後の介護サービス利用や施設入所などについて、私達ソーシャルワーカーにご相談下さい。医療・福祉の専門家として、一人ひとりに最善の対応ができるようサポートを行って参ります。
退院後を見据えたサポート体制
病院にいる期間はほんの数カ月です。
だからこそ、私たちは退院後の生活のことを入院中から徹底して考えサポートしていきます。
家屋調査
【初期】
早期に自宅の状況を確認することで実際の自宅での生活を想定し、各々の患者さんに合わせたリハビリ内容に反映させています。
【改修前】
自宅復帰に際して患者さんが回復状況に応じた快適な生活が送れるように、自宅内の段差解消や手摺りの設置などの住宅改修や福祉用具を検討し、生活動作の安全性を確認していきます。
家屋調査
住宅改修業者へ連絡または実際に改修前の家屋調査へ同行して頂き、患者さんに合った適切な場所に必要な手摺りを設置するなど快適な環境設定を提案していきます。
居宅介護支援専門員(ケアマネージャー)
訪問リハビリスタッフが早期に介入
住宅改修業者へ連絡または実際に改修前の家屋調査へ同行して頂き、患者さんに合った適切な心身状態を退院前から把握することで効率的な介護支援計画の作成を支援します。入院中から当院訪問リハスタッフが介入することで、必要なリハビリ内容や方針を早い段階で効率的に確認することが出来ます。それにより患者さんは自宅へ帰られた際に安心してサービスを受けることが出来、早期に自宅生活に慣れるような援助が可能となります。
ご家族への介助支援活動
自宅生活に向けて必要な介助方法の指導を行います(生活全般)
病棟やリハビリ室でご家族の介護負担へ配慮した患者様に応じた効率的な介助方法の指導し、技術習得を援助します。
退院前訪問指導
住宅改修後の手摺りや福祉用具などの設置状況や、実際にそれらを使用して動作の安全性確認を行います。また、ご家族へ実際の生活場面での介助方法の支援も必要に応じて行います。改修の必要性がない方でも、各々の患者さんに合わせた動作指導を実施しています。
在宅支援関係者への情報提供
介護保険下における担当者会議への出席に積極的に参加し、心身状態の説明・今後の生活に向けてのアドバイス(介助方法・サービス内容の提案)などを行っています。また、入院中からの介入が困難な在宅支援業者に対しては文書による情報提供を行っています。
退院後の支援
直接自宅訪問または電話連絡により自宅退院後の生活状況や退院前後の身体状況の確認を行います。また患者さん・ご家族の相談や生活上の悩みを聴取し必要に応じた援助やアドバイスを行っています。
脳卒中教室
退院後の生活のイメージがつかず、今後について心配なことはありませんか?
当院では脳血管疾患で入院されている患者さんおよびその家族の方を対象とした脳卒中教室を開催しています。
脳卒中の疾病の理解、退院後の生活に向けた情報提供など、必要な情報を知ることで一緒に不安を解決していきましょう。
脳卒中教室の詳細
リハビリセラピスト(PT・OT・ST)、看護師、ケアワーカーを中心に活動をおこなっており、講座の内容により医師、歯科衛生士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、福祉用具業者と連携を行っています。
教室は1クール (全3回)× 4回/年とし、隔週土曜日の午後(13時半-15時半)に開催しています。
- 第1回
- 『脳卒中について』医師
- 『口腔ケア』 歯科衛生士
- 『高次脳機能障害』言語聴覚士
- 『片麻痺者体験』理学療法士
- 『家族交流会』
- 第2回
- 『介護保険』医療ソーシャルワーカー
- 『退院後の生活事例』作業療法士
- 『脳卒中の再発予防』看護師
- 『家屋改修』作業療法士
- 『福祉用具』福祉用具業者
- 第3回
- 『栄養管理』管理栄養士
- 『介助指導』理学療法士/作業療法士/介護福祉士
- 『家族交流会』
当院脳卒中リハビリの実績
脳卒中などの脳血管疾患からのリハビリを得意とします
在宅復帰率約80%、回復期病棟専従セラピスト在籍
当病棟は、リハビリテーション病棟Ⅰを取得しています。これは、在宅復帰率や重症な患者さんの受入率、回復率など高い基準をクリアした病棟が取得することができるもので、全国の回復期病棟でも2割しか取得出来ていません。入院患者さんの約9割が脳血管疾患で入院されており、その中で約8割の方が在宅に復帰されます。
医師・看護・介護・リハビリスタッフの合同チームにより質の高い医療を提供します
回復期リハビリテーション 病棟に関わる医療専門職 |
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歯科医師の介入(脳血管疾患患者の99.4%)
脳卒中などの回復期に寝たきりで口から栄養を摂ることができない状態が長く続く場合、見落とされがちなのがお口のケアです。口を使わないことで口腔の機能が衰え、口腔内の乾燥や嚥下障害、歯の傾き、義歯が合わなくなるなど様々な不具合が起こります。このような状況は口腔の衛生状態を悪化させ、細菌で汚染された唾液が誤って気管に入ることで誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。当院歯科は、院内の脳卒中に関する医療チームとの連携により入院中の患者さんの口腔ケアを4名の歯科衛生士により実践し、肺炎の予防と順調なリハビリテーションのサポートに貢献しています。
「栄養摂取」に対する取組栄養サポートチームNST
入院中の栄養管理は、疾患の回復、感染症や合併症を起こさないために大変重要です。NSTでは、多職種が協力し患者さんの状態やリハビリの内容に合わせた栄養管理に取り組んでいます。当院ではできる限り経腸(胃や腸を使っての)での栄養管理を方針としており、嚥下障害のある方には、VF検査(嚥下造影検査)、VE(嚥下内視鏡検査)も行い、患者さんの食べる姿勢や食物の形態、訓練方法などを日々検討し、出来る限り口から栄養を摂取できるように取り組んでいます。
NSTカンファレンス
食事に問題を抱える患者さんに関しては、定期的に栄養状態、食事方法、治療方針などの医療専門職の話し合いが行われています。
職種を超えた情報共有により、より緻密なリハビリテーション医療を提供しています
回復期リハビリテーション病棟では、医師をはじめ、リハビリスタッフや看護スタッフ、薬剤師、栄養士などがチームとなり60名の患者さんの治療やリハビリなどの入院生活を支えていきます。各専門スタッフが、密に情報交換を行い、職種を超えた定期的な総合カンファレンスなどを行うことでリハビリや看護の質の向上を実現しています。定期的な総合カンファレンスに基づきリハビリテーション総合実施計画書を作成します。